堕ちて、堕ちて、地獄まで。







そんなことをもちろんお母さんに言うわけにもいかず、一人で抱え込んでいたという点では私はよく頑張っていたと思う。

でもそんないじめに唯一参加していない美少女が、愛樹ちゃんだった。

いつも私のことを見もせず、一人で本を読んでいるか絵を描いているか。

誰かと話しているわけでもなかったし、いつも一人で静かに過ごしている印象が強かった。

強いて言えば…たまに、私と目が合うか、それくらい。

その態度はどこか他のクラスメイトと離れて見えた。

まるで彼女だけ数歳年上かのように、違うオーラが漂っていた。

でも、ある日ぱったりといじめが無くなった。それはなんの前触れもなく、突然の出来事だった。

「月果ちゃん、今までごめんねー」

「ずっと意地悪しててごめん」

「月果ちゃんってすごいいい子だったんだね!」

「月果ちゃん、大好き!」

そう言われて嬉しかった。ようやく、失ったものを取り返したような気がした。

それから、私はようやく小学校生活というものを満喫し始めた。

友達だって沢山できたし、いじめてきた子とも仲直りすることだってできた。

その後に愛樹ちゃんが転校していった事実は覚えているけれど、その時皆がどんな反応をしていたかなんて覚えていない。

クラスにはもういじめというものは存在しなくなったんだ、そう思って今まで安心していたのに。






< 167 / 185 >

この作品をシェア

pagetop