堕ちて、堕ちて、地獄まで。
そんなことをもちろんお母さんに言うわけにもいかず、一人で抱え込んでいたという点では私はよく頑張っていたと思う。
でもそんないじめに唯一参加していない美少女が、愛樹ちゃんだった。
いつも私のことを見もせず、一人で本を読んでいるか絵を描いているか。
誰かと話しているわけでもなかったし、いつも一人で静かに過ごしている印象が強かった。
強いて言えば…たまに、私と目が合うか、それくらい。
その態度はどこか他のクラスメイトと離れて見えた。
まるで彼女だけ数歳年上かのように、違うオーラが漂っていた。
でも、ある日ぱったりといじめが無くなった。それはなんの前触れもなく、突然の出来事だった。
「月果ちゃん、今までごめんねー」
「ずっと意地悪しててごめん」
「月果ちゃんってすごいいい子だったんだね!」
「月果ちゃん、大好き!」
そう言われて嬉しかった。ようやく、失ったものを取り返したような気がした。
それから、私はようやく小学校生活というものを満喫し始めた。
友達だって沢山できたし、いじめてきた子とも仲直りすることだってできた。
その後に愛樹ちゃんが転校していった事実は覚えているけれど、その時皆がどんな反応をしていたかなんて覚えていない。
クラスにはもういじめというものは存在しなくなったんだ、そう思って今まで安心していたのに。