堕ちて、堕ちて、地獄まで。
不思議だ。まず最初に目がつくものなら人間だろうと思っていたが、この人はいつからここにいたのだろう。
金髪のさらりとした髪が、彼の片目を軽く覆っていた。
「目が覚めた…?よかった」
そう言ってにこりと微笑んでくれる彼。その柔らかい笑みにどぎまぎする。彼はとても綺麗な顔をしていて、けれども親しみやすそうな印象だった。
でも、私は彼に心配される理由なんてきっとない。
だって私は誰なのか、わからないから。
「私は、誰なの?」
そう聞くと、彼はすこし驚いた表情をした。でもその表情はすぐにまたあの柔らかな笑みに変わる。
「キミは…」
end.