堕ちて、堕ちて、地獄まで。
出来上がったお粥が入った鍋と共に、ドキドキしながら彼の部屋の前に立つ。
ノックをコンコンとして、
「莉音」
と彼の名を呼ぶ。返事はなかった。寝ているのだろうか。
二回ノックするのはトイレだったっけとか余計なことを考えながら、私はそっと部屋の中に入る。
部屋は涼しかった。エアコンの温度は23℃を示していて、こんなに低くていいのかと疑問を持つ。
そして当の本人は布団に包まって横になっていた。眠ってはいないらしい。
「莉音、食欲湧いてる?お粥作ったんだけど」
と言うと、数秒経ってから、
「…月果が、作ったの?」
と尋ね返された。
「そうだよ。私が作った」
ちょっぴり自慢げに答えると、彼の口角がニヤリと上がった。
「じゃあその自信作、食べさしてよ」
じ、自信作とか言ってもそこまで難しくないやつだし!
お粥が自信作とかいうやつおかしいだけじゃん!だとか心の中でツッコミを入れながら、私は持ってきたお茶碗にお粥を入れてずいと渡した。