堕ちて、堕ちて、地獄まで。





ガチャ。

いつもは開いていないドアは、すっといつもそうであるかのように私を受け入れた。

莉音が先に帰ってることはあんまりなかったのにな、なんて思っていると家が真っ暗なことに気がついた。まさか、

「ど、」

泥棒…?
恐る恐る電気をつけてみると、そうではないらしいことが分かった。そこではソファーで莉音が眠っていた。

「ん…?」

ちょっと欠伸をして伸びをした彼に、私は慌てる。電気、つけない方がよかった…?

「あ、ごめん。起こした?」

そんな私に、彼は首を横に振った。

「んーん。それよりこっちきて」

鞄を置いて近づいてみると、いきなり腕を引っ張られた。

「⁉︎」

気づくと、そこは莉音の腕の中。彼の制汗剤の匂いがふわっと広がる。

少しすると、彼はそっと私を離した。目が互いに合って、その瞳に吸い込まれそうになる。

「月果」

いつもより数倍色気のあるトーンで、彼は私の名を囁く。ドキドキをどうにか落ち着かせようとしながら、胸にそっと手を置いた。

「俺さ、お前のことが好きなんだ」

その言葉に、私は目を見開く。

「最初は、妹としてしか見てなかった。けど…、だんだん変わっていったんだ」

そこで彼は少し目線を逸らした。莉音でもはっきり自分の気持ちをいうのは恥ずかしいんだって分かった。

「…私も」

「…」

「…私も、莉音のことが好きだよ」



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