堕ちて、堕ちて、地獄まで。



「鈴城くん、おはよう」

凛咲ちゃんはにこりともせずに挨拶する。

凛咲ちゃんって好きな人の前だと照れちゃう人だったっけ。

中学の頃は推しの俳優かなんかに夢中になっている記憶しかない。

「おはよ。」

彼はすぐに凛咲ちゃんから目を逸らすと、もう一度私をじっと見つめる。

「…何」

「…いや。月果が河合さんと仲良くしてたなんて、って思って」

なにこの凛咲ちゃんとのギャップ。

「ねえ、やっぱ月果って呼び方やめない?私も慶弥さんって言ってるけど、鈴城くんの方が言いやすいし」

「別によくない?俺がしたいからそうしてるだけでさ。なんなら月果は俺のこと鈴城って呼んでもいいし」

「そういうことじゃなくて!」

私は彼を遮る。が、

「…」

理由を説明する上手い言い訳が思いつかなかった。まさか凛咲ちゃんが慶弥さんのことを好きだなんてことを言えるはずがないし。

「まあ、別にいいけどさ。でも俺は変わらず月果って呼ぶから。…あー、河合さんってそういえば下の名前なんだっけ」



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