堕ちて、堕ちて、地獄まで。
「え、っと…凛咲、です」
「凛咲ちゃん、ね」
それっきり慶弥さん…鈴城くんは黙り込んでしまった。
嫌な沈黙が続く。
「あ、じゃ私たちここが最寄りだから降りんね」
「…うん。じゃあ、また」
凛咲ちゃんはおずおずと手を振る。
「ちょっと鈴城くん!」
電車が去り凛咲ちゃんが見えなくなってから、私は彼を咎める。
「…凛咲ちゃんは、俺のことを好きなフリをしてるんだね」
「は?」
思いがけない言葉に、私の開いた口が塞がらない。
「凛咲ちゃんは…」
と言いかけてやめた。
凛咲ちゃんが鈴城くんのことを好きだって教えてくれたのは、私が信頼できると思ってくれているからだ。
それを容易に本人に伝えてはならない。