堕ちて、堕ちて、地獄まで。
莉音に信頼されるって、すごく嬉しいことなんだな。
そう言うと、ぷっと吹き出す彼。
「なんで笑うの…」
「いや?」
そこで笑った理由を教えてくれることは、この日はなかった。その代わりに彼は私の胸に手を触れる。
「え、ちょっとどこ触って…」
「別に前だって全部触っただろ。
…ここって、心臓だよな」
彼の手は、私の心臓の上に触れていた。私の心臓がとくん、とくんと規則正しく鳴っているのが聞こえる。
「うん、多分。でもそれが…」
何、と聞く前に彼は話し出した。
「愛樹は、自分で心臓を刺して死んだんだ。
運の悪いことに、ナイフは心臓のど真ん中を貫いていた。」
ありえないほど酷い彼女の死に、私は目を見開く。
そこまで悩んで、誰にも迷惑をかけないようにそんな酷い死に方をするなんて。
莉音は続ける。
「月果はそうならないように、俺が守るから」
「…」
そこから少し黙った彼だったが、意を決したようでまた口を開く。
「だから、これから何があっても俺と一緒にいてくれますか」
そんなん、言われたらどきどきしちゃうじゃん。声が震えないように、彼をはっきりと目に捉えながら頷く。