堕ちて、堕ちて、地獄まで。





「そんな緊張しなくてもいいよ。月果ちゃんはほぼうちの族に無関係な人だから変装はしてもらったけど」

そう。私はなぜか変装させられていた。

普段は黒髪ロングで黒の瞳だが、ウィッグで茶髪ボブの上に青色のカラコン、そしてメイクまで帆奈にしてもらった。ここまでする必要があるのかは謎だが、普段の自分よりだいぶ可愛くなれたのは素直に嬉しい。私のことをよく知っている人でなければ、例えクラスメイトであっても…たぶん私だと気づかないだろう。

「あと、できれば月ちゃんって呼ばせてもらえると嬉しいかな」

あだ名みたいだけど、これは多分私が水無瀬月果だとバレないようにするためのことだろう。

「あ、はい全然大丈夫です!」

彼氏が族…そしてもしかしたら敵なのかもしれないのに…ここまでしてくれる塔雅さんはすごい。

「じゃあ月果…月ちゃんはあの車乗って。俺らは別の車に乗るから」

「あ…はい、わかりました」

「じゃね、月果」

帆奈が手を振る。

私が察するに、塔雅さんは帆奈とイチャイチャしたいのだろう。それはもちろん帆奈も同じなのだ…と、思う。私は二人が入っていった大きめのバンをあとにして、目の前の黒色の小型車の後部座席に乗り込んだ。

「あの…よろしくお願いします」

運転席に座っている男の人に軽く挨拶する。

「ん。あー…そういえばあんた、坂口莉音の彼女だって話だよね」

いきなりそう言われて、私は答えに迷う。この人に本当のことを話してしまっていいのか分からずあたふたしていると、ぷっと笑い声が聞こえた。私は驚いて彼を見る。




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