堕ちて、堕ちて、地獄まで。
塔雅とかも見ただろ?塔雅とかは特に性格もいいし、それに顔だけだったら俺も負けてないだろ。塔雅ほどじゃないけどな。
月果のことを好きになってくれるやつだって、あいつの他にもいるだろ」
「…なんで」
なんでそんなに莉音を否定するの?その言葉はかき消された。だって、それを彼に言っても仕方のないことだから。彼から見た莉音は、ただ女を弄ぶだけの最低なクズ男だった。
息を何回も吸ったり吐いたりしてどうにか気持ちを落ち着けてから、私はその口を開く。
「…私は、莉音のことが好き。彼を信じたい。そう思ってる、から」
やばい。声が震える。
「だから、…っ」
それ以上は言えなかった。我慢していたはずの涙がぽろぽろと溢れていく。別に風磨がそう思うのは仕方がないことなのに。風磨がそう思っているのは、彼が幼い頃の莉音のことをずっと見てきたからこそ言えることなのに。
「ごめん…っ」
私は風磨から顔を背ける。
「…月果さん」
零さんの落ち着いた声が聞こえた。そうだ、零さんには私が水無瀬月果だって言っていなかったことを忘れていた。
でも今は正直そんな話どころではない。誰も悪いわけじゃないのに、涙が止まらなくなってしまっていた。
「風磨が車を出しますから、一旦帰りましょう」
「ごめんなさい、…ありがとうございます…っ、本当にごめんなさい…っ」
なんだか私、謝ってばかりで恥ずかしい。私は必死に涙を止めようとしながら、彼らの後についていった。
「はい」