闇に溺れて、秘密のキスを。【ハロウィン特別番外編】
「あー、これは確かにイタズラだね」
「……迷惑ですか?」
「そんなわけないよ、俺の我慢の問題だから」
神田くんは私の背中に手をまわして、優しく抱きしめてくれた。
私もギュッと神田くんに抱きついて、彼の胸元に顔を擦り寄せた。
「……っ、未央」
気のせいだろうか。
私を抱きしめる力が心なしか強くなった気がする。
「神田くん?」
「さすがにそれは困るかな……」
異変に気づいてふと顔を上げると、神田くんは私から目を逸らし、困った顔をしている。
今日の神田くん、やっぱり様子が変だ。
「もしかして神田くん、無理してる?」
体調があまりよくないのかと思い、神田くんの額に手を当ててみる。
「うーん、熱はない……わっ」
けれどすぐ、神田くんに手首を掴まれてしまう。
「未央、今の状況をわかってるの?」
「状況……?」
「ここには俺を止めるものが何もないんだ。お願いだから俺を刺激するようなことはしないで」
神田くんは怒っているわけではない。
けれど本気でお願いされているというのは十分に伝わった。