闇に溺れて、秘密のキスを。【ハロウィン特別番外編】
◇
いつも家で過ごすとなれば、神田くんのところだったため、彼が私の家に来るのは珍しくて慣れない。
「どうぞ!」
「……」
「神田くん?」
私自身、緊張していたけれど、神田くんの様子もおかしい気がする。
神田くんは家のドアの前でなぜか立ち止まり、中に入ることを躊躇っていた。
こんな神田くんを見るのは珍しく、もしかして何かあるのかと心配になる。
「神田くん、あの……」
「人間ってこんなにも不安に駆られるんだね」
「えっ?」
「これもコントロールの練習として乗り切るしかなさそうだ」
そう言って、神田くんはいつもの優しい笑みを浮かべる。
その表情を見て安心しつつ、先程の言葉にどこか引っかかる部分があった。
「コントロールって何のこと?」
「うん?感情のだよ」
「感情の……」
私の前では感情を隠さなくなったと思っていたのに、それは勘違いだったのだろうか。
自分には心を許してくれていると思っていただけに、少し悲しくなる。