闇に溺れて、秘密のキスを。【ハロウィン特別番外編】




 いつも家で過ごすとなれば、神田くんのところだったため、彼が私の家に来るのは珍しくて慣れない。


「どうぞ!」
「……」

「神田くん?」


 私自身、緊張していたけれど、神田くんの様子もおかしい気がする。

 神田くんは家のドアの前でなぜか立ち止まり、中に入ることを躊躇っていた。


 こんな神田くんを見るのは珍しく、もしかして何かあるのかと心配になる。


「神田くん、あの……」
「人間ってこんなにも不安に駆られるんだね」

「えっ?」

「これもコントロールの練習として乗り切るしかなさそうだ」


 そう言って、神田くんはいつもの優しい笑みを浮かべる。

 その表情を見て安心しつつ、先程の言葉にどこか引っかかる部分があった。


「コントロールって何のこと?」
「うん?感情のだよ」

「感情の……」


 私の前では感情を隠さなくなったと思っていたのに、それは勘違いだったのだろうか。

 自分には心を許してくれていると思っていただけに、少し悲しくなる。

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