闇に溺れて、秘密のキスを。【ハロウィン特別番外編】
「これ、全部俺のために作ってくれたの?」
「うん……!ハッピーハロウィン、ということで!」
神田くんは最初、お菓子を見て驚いた表情を浮かべていた。
「ありがとう未央。とても嬉しいよ」
けれどすぐ嬉しそうに笑ってくれて、成功したと思いたい。
「神田くんの口に合うかはわからないけど……あと甘いものばかりだし、カップケーキ以外はカボチャで攻めちゃったし……!本当に無理に食べなくても……」
問題は味だったけれど、私が食べた分にはそれなりに美味しくできたと思った。
ただ神田くんの口に合うかはわからなくて、つい言い訳に近い言葉を並べてしまう。
「俺のためにありがとう、未央」
心なしか“俺のため”を強調している気がしたけれど……神田くんが喜んでくれていたため、それだけで十分だった。
神田くんがお菓子を食べたときは一番緊張したけれど、彼は「すごく美味しい」と言って全部食べてくれた。
それがとても嬉しくて、神田くんより私の方が喜んでしまった気がする。
神田くんはそんな私を愛おしそうに見つめてきて、恥ずかしくなってしまった。
「あっ、じゃあ片付けてくるね!」
「俺がやるよ。未央が作ってくれたんだから」
「いいのいいの!神田くんはお客さまだから!」
立ち上がろうとする神田くんを止め、私は食器の乗せたお盆を持って再度キッチンへと向かう。
お菓子の披露は終わったけれど、まだまだハロウィンはこれからである。