闇に溺れて、秘密のキスを。【ハロウィン特別番外編】


 ハロウィンといえばトリックオアトリート!
 お菓子をくれないとイタズラするという、恒例の言葉だ。

 お菓子を持ってないであろう神田くんに、イタズラと表してたくさん甘やかしてもらおうというズルい考えを持っていた。


 その時間を求め、片付けが終わった私は神田くんのもとへと急いだ。


「未央、走ったら危ないよ」
「さすがに家の中では転ばないよ……!」


 まるで子供扱いされているようで、反射的に言い返してしまう。

 そんな私を見て目を細めて笑う神田くんは、本当に親のようでなんだか不服だ。



「それより神田く……」
「そういえば未央、着替えないの?」

「え?」


 ようやく本題に入ろうとしたのも束の間、神田くんと口を開くタイミングが被ってしまう。

 着替え……あっ、そういえば私、制服のままだった。


 神田くんの家で過ごすときは基本的に制服だったため、ついその癖で彼といるときは制服のままだと無意識に考え、着替えなかったのだろう。

 逆に神田くんは和服に着替えることが多いけれど、今日は私の家のため制服のままというのも確かに新鮮な気がする。


 いつもは大人びて見える神田くんが、ちゃんと高校生しているって感じで嬉しい。

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