ウサギのぬくもり 〜四季〜
ぬくもり
 私はウサギ。今はたった一羽。

 ある日。
 いつものように食事に行くと、私の好きな草地に誰かいる。

 人間のようだけど、とても小さくて私くらい。大きな花びらみたいなのを何枚も身につけて、そこに座っている。

 手を顔に押し当てて、震えて。
 私の仲間は離れて草を食べながら様子をうかがっている。

 人間のようで人間じゃないこの子を警戒しているのか、誰も近寄ろうとしない。

 この子はどうしたんだろう?

 私はそばに寄って鼻を寄せてみた。
 いい香りがする。花の匂い。
 小さな人間は私に気づいて顔を上げた。

 触れてみると手も足も冷たい。私は体を擦り寄せた。
 驚いたみたいだけれど笑ってくれた。声は出さないけれど、喜んでくれたみたい。

 もうすぐ冬。風は冷たくなってきているから、毛皮も無いこの子は寒かったんだと思う。

 私も一羽、この子も一体。
 きっと仲間とはぐれたんだ。

 ぬくもりをあげる。
 私が、唯一あなたにあげられるもの。

 あなたが寂しいなら、ずっとあなたのそばに…
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