ウサギのぬくもり 〜四季〜
冬の木
私はウサギ。
寒いある日に出会った小さな人間のような生き物と、私は今も一緒。
私に寄り添う小さなその生き物は、目を細めて嬉しそうにする。
私の毛皮が温かで気に入ったのか、時々擦り寄って。だからどこに行くにもずっとそばにいた。
この子からほんのり香る、花の匂いは心地が良い。
今日来た場所は、春になれば花が咲き誇る場所。
けれど今は寒い冬。草も短くて、今は誰もいない。
あの子が走っていった。
何も咲いていない、冷たい一本の木の、その幹に向かって。
縋り付いて、あんなに悲しげに。
私はその子の近くに寄ってその木を見上げた。
空っぽの枝も頼りなく見えて、強い風が来たら折れてしまいそう。
突然の強く冷たい風が吹いた。それでもその子は木に縋り付いたまま。
私はその子に擦り寄った。
あなたが冷えてしまうから、そんなに悲しそうだから…
涙を流して悲しむその子。
その時、フワッと、花の香りがしたような気がした。その子の匂いとは違う、春が近付く香り。
あ……
花じゃない。でも、小さな蕾がいくつも付いて…。
そう、この子はきっと…
この子は嬉しそうに私に笑って寄り添う。
あぁ、きっともうすぐ咲くのね。
いま一瞬、満開に咲く白い花の幻が見えた気がしたから……
寒いある日に出会った小さな人間のような生き物と、私は今も一緒。
私に寄り添う小さなその生き物は、目を細めて嬉しそうにする。
私の毛皮が温かで気に入ったのか、時々擦り寄って。だからどこに行くにもずっとそばにいた。
この子からほんのり香る、花の匂いは心地が良い。
今日来た場所は、春になれば花が咲き誇る場所。
けれど今は寒い冬。草も短くて、今は誰もいない。
あの子が走っていった。
何も咲いていない、冷たい一本の木の、その幹に向かって。
縋り付いて、あんなに悲しげに。
私はその子の近くに寄ってその木を見上げた。
空っぽの枝も頼りなく見えて、強い風が来たら折れてしまいそう。
突然の強く冷たい風が吹いた。それでもその子は木に縋り付いたまま。
私はその子に擦り寄った。
あなたが冷えてしまうから、そんなに悲しそうだから…
涙を流して悲しむその子。
その時、フワッと、花の香りがしたような気がした。その子の匂いとは違う、春が近付く香り。
あ……
花じゃない。でも、小さな蕾がいくつも付いて…。
そう、この子はきっと…
この子は嬉しそうに私に笑って寄り添う。
あぁ、きっともうすぐ咲くのね。
いま一瞬、満開に咲く白い花の幻が見えた気がしたから……