ウサギのぬくもり 〜四季〜
夏の海
小さくて不思議な、人間のようなこの子と知り合った寒い冬。
そして春を越え、やがて緑の草の長く伸びる、暑い季節が巡ってきた。


私の毛は長いため、私は少しでも涼しくなるように、長い耳を風に当てた。

この子は変わらず私のすぐ側をついてくる。
私に時々笑いかけてくれるのを見ていると、私も暑さを忘れて嬉しくなってしまう。


だいぶこの子と歩いてきたけれど、向こうに何かが見えてきた。
青い青い、キラキラと光る大きなもの。

それに、嗅いだことのない変わった匂い。

ザザ…ザザ…

そんな音も聞こえてくる。

そばにいた小さな子が走り出した。


私が追いかけてやってくると、小石や変わった形の物が転がる、白い砂が広がる場所にたどり着いた。

小さな子はその先に広がる、湖よりも大きな水面を見て目を輝かせていた。

先ほど私に聞こえていたのは、その水が砂の地面に寄せては返す音。

この水はどこまで広がっているのだろう?
この子と私が行ける場所だろうか?

この子は、この先に行きたいの…?


しばらくするとこの子は嬉しそうに笑いながら私に抱きついてくる。

きっと違う…
私と同じく、この広い水を見てなんだか懐かしさを感じたのかもしれない。

不思議な場所。この水の音を聞いているだけで穏やかな気持ちになる。


あちこちに溜まっている水や転がっている大きな岩の近くには、私よりこの子よりずっと小さな生き物たちがいた。

この子がよく、私の体に耳を寄せ、私の心の音を聞こうとするように、この子はこの小さな生き物たちにも耳を傾けているように見える。

みんな生きているのね。


私たちは柔らかい砂の上でいつまでも、どこまでも広いその水を見ていた。

水の音を聞きながら、暗くなり、夜空に星が広がるまで…
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