想いのままに心のままに ～結婚より仕事の30女が身ごもりました～

当たり前のように恵理の部屋に入る宏貴。
玄関で恵理の前に膝をつき、自分の肩に恵理の手をあてると靴まで脱がせてくれる。

部屋に入ると恵理を寝室へ向かわせて、クローゼットから部屋着を出して着替えさせる。
着替えが終わると、ベッドの布団をめくり、恵理を寝かせて丁寧に布団をかける。

「何か飲み物持ってくるな。」
そう言って恵理の元から離れる宏貴。
その背中をみて、こみ上げるものがこらえきれずに恵理は布団を頭までかぶる。

足音で宏貴が隣に戻ってきたことが分かる。
そっとベッドに座った宏貴は、布団の上から恵理の頭を撫でる。

なんで・・・なんでよ・・・いっそ気持ちを私にぶつけてくれたらいいのにと思う。
汚い言葉を使ってもいい。大声だっていい。
感情を私にぶつけてくれたらいいのに・・・。

恵理はそんなことを思いながらも、頭を撫でてくれる宏貴の手を振り払えない自分にあきれた。