想いのままに心のままに ~結婚より仕事の30女が身ごもりました~
「おはよう」
支度が終わるころ宏貴が起きて来た。
「おはよう」
何もなかったように繕いながら、恵理は宏貴に笑いかける。

宏貴にはわかってしまう。
化粧の下に隠している深いクマや、悪い顔色。
泣きはらした瞳も。

でも、気づかないふりをする。

そして笑いかける。

そんな宏貴の笑顔を見て、恵理は泣きそうになる自分の心に、泣く資格もないのにと言い聞かせて我慢をする。
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