想いのままに心のままに ~結婚より仕事の30女が身ごもりました~
「もっと話をお聞きしたいですが次の方の予約があるので、今日はここまでですね。」
磯貝医師の言葉に、恵理は少し残念に思うくらい、想いのままに話をすることがこんなにもリラックスできるとは知らなかった。

「美園さんのお話の仕方を聞いていて気づきましたが、かなりご自分の中で話す内容をまとめて話をされますね。」
「そうでしょうか」
「いつも話をするときに相手のことを考えすぎていませんか?」
恵理は自分自身のことを振り返る。
「例えば今日も廊下で待っている男性。」
磯貝医師からの意外な話の展開に恵理は、医師の方を目を丸くして見る。

「先日、診察が終わって私が廊下に出た時に立ち上がって深々と頭を下げてくれましてね。印象に残りました。」
「・・・」
あの日、自分に全く余裕がなくて恵理は宏貴のことを考えている余裕がなかった。
自分の知らなかった場所での話に、恵理は聞き入る。
< 122 / 263 >

この作品をシェア

pagetop