想いのままに心のままに ~結婚より仕事の30女が身ごもりました~
つわりで眠れていない恵理を寝かせてあげたくて、宏貴は恵理に言われた目的の場所についてからも恵理をしばらく起こさず、自分も運転席の椅子を倒して休んで、恵理の目覚めを待った。

「・・・ごめん・・・寝ちゃった。」
まだ眠そうな顔で目を開けて自分の方を見つめる恵理に愛しさが募る。
どこまでも優しく、恵理の頬に触れる宏貴。
「起こしたくなかったんだ、俺が。寝かせたかった。」
ずっとそばにいてくれている宏貴が、どんな思いで自分を支えてくれているか、改めて感じる。
「あったかい」
宏貴の手の温かさに、もう一度目を閉じる恵理。

宏貴は、すっかり痩せてしまった恵理の頬に触れながら、どうしたらいいか、まだわからない自分を不甲斐なく思った。

恵理に宿る命をあきらめたら、恵理に笑顔が戻るのだろうか。
元気に大好きな仕事ができるのだろうか。

恵理が望んでいるのなら、この命を・・・。
なのに・・・まだ見ぬ我が子への想いを断ち切れない。
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