想いのままに心のままに ~結婚より仕事の30女が身ごもりました~
「きっと今が一番つらい時期です。ご主人も奥さんも。でも悪いのは病気であって、ご主人でも奥さんでもないことを忘れないでくださいね。」
柔らかい表情で語り掛ける医師の言葉に、宏貴は頷くしかなかった。


広い病室の中、恵理は点滴をしながらまだ意識を戻していない。

心療内科の病棟に入院することになった恵理。
ひとまず2~3日の入院をしてみて、様子をみて期間を延ばすことを提案された。

宏貴はベッドの横にある椅子に座り、そっと恵理の手を握る。

温かく体温の戻った手にほっとする自分がいる・・・。

同時に冷たくてこのまま消えてしまいそうな恵理の手の冷たさを思い出す。

それだけで怖くて体が震えそうになる。
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