想いのままに心のままに ~結婚より仕事の30女が身ごもりました~
電話を切ってから病室に戻ると裸足のままの恵理が宏貴を見て駆け寄ってきた。

あまりに不安定な恵理の足元はすぐに崩れそうになり、宏貴は急いで近づき抱き留める。

「ごめん。廊下にいたんだ。ごめんな。」
まるでおびえている子供のように宏貴に抱き着いて離れない恵理。

「大丈夫。もう離れないから。荷物も持ってきたし、ずっとそばにいるよ。」
強く強く恵理の体を抱きしめてから、宏貴はひょいっと恵理の体を抱き上げて、ベッドに戻った。
ベッドに恵理をおろそうとしても、恵理は離れない。

「大丈夫」
何度も繰り返しながら宏貴は恵理の背中をさする。

恵理はしばらく宏貴から離れることができなかった。
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