想いのままに心のままに ~結婚より仕事の30女が身ごもりました~
「すみません、そこの椅子使ってください。」
恵理にしがみつかれて離れられない宏貴が恵理の父に言う。
「ありがとうございます。」
恵理の父は少し距離をとって、椅子に座った。

「恵理。お義父さん、恵理のために来てくれたんだ。今は北海道にいるらしい。」
宏貴が何とか二人をつなごうと話題を振っている。

「北海道の室蘭にいる。そこで農場を経営してるんだ。農場で販売してる新鮮なミルクで作ったもの、持ってきたんだ。体調がよくなってからでもいいから、食べてくれたらうれしい。昔から、プリン、好きだっただろ?」
父の言葉にも反応できない恵理。
「ウェブサイトを見たら立派な牧場で驚きました。」
「ずっと私はサラリーマンをしていてね。早期退職をして、退職金で古い農場を買ったんだ。よかったら今度来てほしい。体調がよくなったら・・・。」
父は恵理の顔を少しでも見たいと、恵理を見つめる。
< 227 / 263 >

この作品をシェア

pagetop