想いのままに心のままに ~結婚より仕事の30女が身ごもりました~
そこには懐かしい母の字で父の名前が書かれていた。

宏貴の方を見る恵理。
宏貴が頷き、今度は恵理の肩を抱く。

「読んでほしい。それがすべてだ。」
父の言葉に恵理は震える手で手紙を読み始めた。

『高志さんへ 
この手紙を読んだあなたはきっと泣いていることでしょう。あなたをのこして先に逝く私をどうかゆるしてください。
死んでしまう私からあなたに、お願いがあってこの手紙を書きました。直接話をするよりもちゃんとカタチに残ったほうが、あなた守ってくれそうだから。最後まで読めなくても、時間がたてばきっと最後まで読んでくれる。そう信じています。』
きれいな母の字。
涙で視界がかすみ、何度も瞬きをして涙を流してから読み進める恵理。
恵理の肩を抱きながら、その涙を時々拭い、宏貴も一緒に読んでくれている。
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