想いのままに心のままに ~結婚より仕事の30女が身ごもりました~
『まずはじめに、高志さん。私の人生はあなたのおかげでとっても幸せでした。病気になんてなって迷惑をかけてしまってごめんなさい。あなたや両親にもたくさん迷惑をかけてしまっているけれど、それでも私の人生はほかの誰にも負けない、幸せな人生だったと私は胸を張って言えます。
すべてはあなたに出会えたから。ありがとう。一人の人間としての幸せ。女性として愛される幸せ。愛する幸せ。そして、母親としての幸せ。すべてあなたにもらったものです。だから、ほかの人よりも長く生きられなくても、私はこの人生に悔いることなくあの世へ逝けます。
ただひとつ、心残りは、心の弱いあなたのことだけ。恵理は大丈夫。私の両親に何度も何度もお願いしています。強くたくましく育ってくれる。だって私たちの子だもの。いつか私を忘れてしまうかもしれないけれど、きっとほかの誰かに愛される。ちゃんと生まれ持った愛される力と魅力を持っている子だと確信しています。』
同じ場所まで読み進めた宏貴が、恵理をみる。
”俺がいる”そう恵理に視線で伝えてくれる。

恵理は頷き、再び手紙に視線を戻した。
『高志さんは誰よりも繊細な心を持っていて、きっと私が死んでしまったら、すべて自分のせいだって思って悲しみの底に落ちてしまうでしょう。きっと、この手紙を読みながら図星だと思ってるでしょ?
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