想いのままに心のままに ~結婚より仕事の30女が身ごもりました~
『だからこそ、私からの最後のお願い。それはほかの誰かをちゃんと愛してください。そしてその人と再婚をしてください。』
知らなかった事実に恵理は父の方をちらりと見る。

『あなたがほかの誰かと一緒にいる姿を見ることを想像してみました。もちろん大好きなあなたです。やきもちをやくことでしょう。でも、やきもちよりも私は怖い。あなたが悲しみのふちから立ち直れず、前を向いて歩けなくなってしまうことが。あなたをのこして先に逝ってしまう私にとって死んでも死にきれないのは、あなたが私のせいで人生を、幸せをあきらめてしまうことです。』
恵理はそこまで読んで、涙が止まらなくなり、読み進められなくなってしまった。

宏貴が恵理の背中をさする。
「もう少しあとで読むか?」
少し呼吸が荒くなっている恵理を心配して宏貴が声をかける。
まだ体調は悪い恵理。
父に会うだけでもかなり体力を消耗して、心にも負担がかかっているはずだ。

恵理は宏貴がさすってくれる手のスピードに合わせるように深呼吸をしてから首を横に振った。
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