想いのままに心のままに ～結婚より仕事の30女が身ごもりました～

「わかった。」
恵理の意志を尊重するように、宏貴は頷く。

「深呼吸しよう。」
「・・・」
宏貴の提案に恵理は深呼吸をゆっくりとしてから再び読み始めた。

『誰かを愛することは、ただ独占するだけが愛じゃないって、私はあなたを深く愛したから知りました。その人が幸せに生きられる。人生、後悔することなく前に進める。そして、一人じゃない人生をおくれる。愛する人にとって幸せと感じられる人生であってほしい。
だって、高志さんの人生は私が死んでしまってからもその先、何年も何十年もまだまだ長い。私と一緒に生きた時間はあなたの人生のほんの一部にしかなれない。悔しいけれど、これは変えようのない事実です。
だから、あなたの残りの人生が誰かと共に、豊かであってほしいと願ってやみません。』
母は父を愛していた。
幼いころの恵理も、母を見ていてその愛の深さは知っている。
鮮明に覚えている。