想いのままに心のままに ~結婚より仕事の30女が身ごもりました~
父が病室に来てくれた時の母の視線だけで、その愛の深さを感じることができる。

『最後の願いはあなたの未来のパートナーと、幸せな人生を送ってほしいということ。
最後のわがままは、私が生きている間にその人に会ってみたいということ。最愛の人が、自分がいなくなった後誰と生きるか、知る権利くらいは私にだってあるでしょ?』

これは母のわがままじゃないことなど、恵理にはすぐにわかる。

ただ、手紙に残すだけでは父は願いを聞いてくれないかもしれない。
だから、生きている間にと急いだのだろう。

本当に父が自分が死んだあと、ほかの誰かと幸せに生きられるようにという、願いを叶えるために、母は最期の最期に、父の背中を押したのだろう。
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