想いのままに心のままに ~結婚より仕事の30女が身ごもりました~
「大丈夫だろ。一緒に画材買いに行ったくらいにしか思わないって。」
宏貴は恵理が自分の手から取ろうとした買い物袋を、恵理から遠ざけて渡さない。
「大丈夫だって。」
少し不機嫌な声を出してしまったことを恵理はすぐに後悔する。

なんて余裕がない私。

「ごめん。やっぱり頭冷やしてから上がる。」
恵理は心配そうな宏貴をのこして、ヒールのかかとを鳴らしどんどんと前に進んでいく。
会社の1階にある女性専用の休憩所の椅子に座り、恵理は頭を抱えた。

だめだ。

自分の感情にストップをかけることに専念しながら、恵理は何度も何度も深呼吸をする。

こんなにも感情が溢れるのは、きっと幼いころの記憶が邪魔するからだ。
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