想いのままに心のままに ~結婚より仕事の30女が身ごもりました~
こういう時、恵理は自分の手が異様に冷たくなることを知っている。
両手を握りしめ、これ以上冷えないようにする。

力を込めて、両手を強く強く握る。

冷えていく手に、自分の中にもあの人と同じように冷たい血が流れているのかと思ってしまう。

違う。
私は違う。

大きく深呼吸をしていると携帯電話が鳴りだした。

仕事の電話かもしれない。
恵理は携帯の画面を見ないまま「はい。美園です。」と電話に出た。

『恵理、大丈夫か?』
宏貴の声に、恵理はすぐに返事ができなかった。
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