想いのままに心のままに ～結婚より仕事の30女が身ごもりました～

～♪

「はい。美園です。」
デスクの電話が鳴り、受話器を取った恵理。
その電話の相手は輸入雑貨店の店長だった。
打ち合わせの時に言い忘れたことがあると、宏貴に電話を代わってほしいと言われた恵理は、すぐに宏貴に電話を渡す。

「これから少しだけ店舗に顔出してくる。渡したい資料と、いくつかページを変更したいらしい。」
電話を切って、脱いでいたジャケットを羽織りながら宏貴が恵理に言う。
「そう。」
そっけなく返事を返しながら宏貴をみる恵理。
「車で行ってくる。すぐ戻れるようにするから、待ってろ。一緒に帰ろう。恵理は体調心配だから、ここで作業してて。しんどかったらソファで休むんだぞ？」
宏貴は恵理のために急いで仕事を終わらせようとしているのだろう。支度をしながら話をする。
「うん。」
「じゃあ、行ってくる。」
恵理の頭をポンと撫でて、宏貴は足早にフロアを出て行った。