タングルド
最近になって父から教えてもらった喫茶店に雪を誘う。
ゆったりとしたソファと静かに流れるクラッシックが心地よい。ときどきプツンプツンと曲の中に異音が入るのは流れている曲が有線などのデジタルではなくレコード盤であることを表している。

注文を伝えると、二人同時にタブレットを取り出した事に笑いそうになった。
ついいつものクセで仕事をしようとしたのだが、雪まで同じ行動を取ったことが、私生活はもちろんだが仕事上のパートナーとしても雪が欲しいと猛烈に思った。

お互い、モーニングを食べ終えたあとスマホのチェックをする。
彩香さんからの『まってます』というメッセージにため息が出そうになり、雪をみると一瞬表情が曇った事に気付いた。
「どうかした?」

「別に、ただSNS上には色んな人がいるな〜って思って」

「今更だね」

「そうね」
そうは言っても雪の表情が硬く見えて不安を感じた。
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