タングルド
「もう!何をしてるのよ!勝手に付き合ってます宣言とかして。暫くは内緒にって言ったのに」

「北山さんなら大丈夫でしょ、というかここはキチンと牽制しておかないと自分の立場を分かって無いみたいだし」

「立場?」

「謝ればまた雪の彼氏の座に戻れると思っているから」

「まさか」

「じゃなきゃ、ノコノコ部屋にやって来ないよ。部屋に入れてもらえると信じていたからこその行動だろ。だから、心配だったんだ」

「私が部屋に入れると?」

「いや、雪が傷つくんじゃ無いかと」

確かに、謝ればいいと思っている様に感じたし、友人として過ごした5年と恋人として過ごした1年を合わせた6年間を軽く思われていた気がして悔しかった、きっと賢一がいなかったら泣き崩れていたかもしれない。

「ありがとう」

和也さんが言っていた気が利き過ぎるという言葉を思い出した。


「なーんて、単に牽制しただけ」

賢一は雪を抱きしめると首筋から耳そして唇にキスを落としていく。

このまま抱かれるのかな・・・ちょっと疲れてるんだけど、拒めないかも。

そんな風に考えていると、ゆっくりと体が離れていった。

「さて、ミッション完遂したし帰るね」

「え?」

「あっ、もしかして何か期待してた?」
賢一のニヤニヤ顔がなんだかムカつく。

「流石に昨夜から今朝にかけて負担をかけすぎたからね、今夜はゆっくりお休み」

そう言うとおでこにキスをしたあと帰っていった。

これで好きになるなって言われても難しい。そもそも、こんな風に最初から“恋愛”でスタートしたことがないので戸惑ってしまう。


そもそも、賢一は本気なのだろうか。
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