タングルド
佐藤さんはどうして私をそんなにも嫌うんだろう?そもそも、嫌いなら関わらなければいいのに。

人の気持ちなんて考えても分からないんだから

「考えるのはヤメ!」

ハッとして周りを見ると、複数の視線を感じる

「どうした?」
「何か問題でも?」

口々に心配する声をかけられあわてて微笑み

「何も問題はないです。失礼しました」

と言うとパソコンの画面を見る。

画面いっぱいに右手人差し指のホームポジション“j”の文字が並んでいた。

「ちょっとだけ、問題が発生したようですが、問題ないです」

ニッコリと笑うと、画面のjを大きく範囲指定してdeleteボタンを押した。


常務は直帰になるので久しぶりに定時に帰ろう。賢一は今日も社長と同行していて時間が読めない、新二さんに会うかもしれないと思うとCrowにも行きにくい。

真っ直ぐに帰ってゴロゴロしよう。

夕飯はほっか亭のめんたい唐揚げ弁当の大盛りにしようか、それともたっぷり竜田揚げ弁当のどちらにしようかと考えながらビルを出ると黒のクラウンの後部座席から背中にかかるほどの明るいブラウンヘアーの女性が降りてきた。

一言でいうと
“可愛らしい”雰囲気の女性だ。

通り過ぎようとした時

「豊田雪さんですよね?」

< 145 / 226 >

この作品をシェア

pagetop