タングルド
電話のコールがしつこいくらいしか知らない。

「いいえ、申し訳ないんですが」

「そう、秘密にしているのね」

何を言い出すんだろう、わたしは賢一の恋人ですとか言うんだろうか。

「賢一さんと付き合っているって新二くんに聞いたけど」

「初対面の方に私のプライベートを話す理由はありません」

「そう、わたしが賢一さんの婚約者だとしても?」

婚約者?

婚約者って言った?

何て答えればいいんだろう。
頭がぐちゃぐちゃだ。

「わたしは新二くんから豊田さんがISLANDで秘書をしているって知っているけど、わたしのことは何も知らないのであればフェアではないですよね、わたしの実家は森川住販を経営してます」

森川住販、聞き覚えがある。
何だっけ?2年前くらいに・・・
「賢一さんは4月からISLANDの副社長に就任して後には社長になる方、我が社のノウハウがISLANDにも役に立てると思うんです」

大島・・・大文字の“島”でISLAND
御曹司風を吹かせないから気が付かなかった。

ここのところの社長との同行はそう考えるとしっくりくる。
常務の各部署の部長との話し合いが多いことも頷ける。

「賢一さんは魅力的な人だから、愛人の一人や二人は仕方がないと思ってます。でも、今は就任する前ですから、控えてほしいと思って」


2ヶ月間の期限付きってそういう事だったんだ。
お試しは、私が賢一を試すのではなく賢一が愛人として私を試しているという事なんだろうか。

「しばらく会うのを控えろと言う事ですか?」

「いいえ、気を利かせて別れなさいと言ってるんです」

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