タングルド
ふいに声をかけられピクリと肩が跳ねてしまった。
これでは寝たふりは無理だろう、観念して目を開けた。

「おはよう、なにか作るね」

起き上がろうとした私の体をまるで抱き枕の様に抱きしめてがっちりホールドする。

「いい、もうすこしこうしていたい」

「うん」

「憩にモーニングしに行こうか」

「それがいいかも」

「じゃあ、もう少しだけこうしていよう」

賢一は抱きしめる腕の力を少し強め、片方の手で髪をなでる。

まるで猫になったような居心地の良さに酔いそうになる。

「明日から3日間、沖縄に出張なんだ。なにかお土産の希望はある?」

「沖縄かぁ~いいな~って、仕事よね。じゃあ紅芋タルトがいい」

「紅芋タルトね、落ち着いたら二人で行こうか」

「行きたい、美ら海水族館の大水槽の前でまったりしたいかも」

「もっと二人でゴロゴロしていたいけど、そろそろ支度をしようか」

そう言うとおでこにキスをしてから起き上がった。


化粧をしているとソファから絶え間なく通知音が入ってくるのが分かる。
賢一がスマホの電源をいれたんだろう。その中にきっと森川彩香からのメッセージもあるんだろう。
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