タングルド
一瞬、凍りつく場に居たたまれない気持ちになる。

夫人は森川彩香と私を見た。
「どう言う事なのか説明してくれる?」


森川彩香は下を向き唇を噛む、そして新二さんはこの状況が飲み込めないのか驚きの表情を隠すことも無かった。
ただ、社長だけはゆったりと椅子にもたれて全体を見ているようだ。


促されるまま席に着くがテーブルには5人分の雪と椿が描かれたテーブルマットと水しか置かれておらず、私の分は無いように思えたが、席に着いてすぐに一つ目の料理が運ばれてくるときには、私の前にも同じテーブルマットが置かれた。

それを見た森川彩香の眉が歪み「どうして」と小さなつぶやきが聞えると

「俺がお願いしておきました。せっかくですから食事を楽しみましょう」
賢一がそう言うと社長も「そうしよう」と返したことで誰も否を言い出せなくなった。

黙々と食事は続き、最後に葛餅とお茶が出てきたところで賢一が夫人に話し始めた。
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