タングルド
<賢一のきもち>
「あのね生理がこないの」

あの日、そんなことを当たり前のように俺に相談する彼女に嫌悪感を抱いた。

「それは俺ではなく新二に相談するべきだし、森川住販の再建を支援するときに、俺と仮の婚約中には絶対に妊娠はしない様にと約束したはず、お互いの両親にはこのことを伏せているのだから、君にも俺にも傷しか残らないだろ」

彼女はポロポロと涙をこぼし始めるが、そんな姿すら白々しく感じる。

「だって、新二くんが・・・ダメって言ったのに避妊してくれなくて、大丈夫だからもし子供ができていてもこの子を後継にしたりしないから、賢一さんが嫌なら堕すから」

「何度も言うが俺は新二が社会人になったら婚約は解消、君は本来の相手である新二と婚約するなり結婚するなりすればいい、ただ、今妊娠するとか君たちは何を考えてるんだ。そもそも、君は新二より歳上だろ、学生でいまだ分別のつかない新二が間違えた場合は君がきちんと正すべき立場だろう」

「わたしは・・・」

「もういい、家まで送る。新二には俺から連絡する。もう何もしゃべらなくていい」

美しが丘の自宅に着くまで彼女はずっと泣いていたが、俺は不快感しかなかった。

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