タングルド
え???
新二くん??

「お姉ちゃんは反対?」

「そうね、反対する」

花の肩がピクリと弾ける。

「って、言ったら交際を止めるの?」

「え・・・それは」

「でしょ、私は母さんのことで恋を諦めたりして欲しくなかったから、花が誰かを好きになってそれは嬉しいけど、後悔だけはしてほしくないかな」

「うん、わたしは母さんの血が入っているから、恋をするとあの人のようになるじゃ無いかと怖い、でも新といると心がやすらいで、自分は母さんのようにならないって思えるの」

新二くんか、詰めの甘い策略家なイメージだから何か企んでいなければいいけど、本当に花を好きなら反対はしたくない。

「そっか」

「でね、週末に新の部屋に呼ばれてるんだけど、それって、あ・・・れかな?」

「あれ?」

「その、あれ」

あれ!!!
新二!アイツ!!!

「どうしたらいいかな?初めてだし、どうするればいいんだろ?こんな事、誰にも相談出来なくて」

「う〜ん」

「お姉ちゃんの初めての時ってどうだった?」

甦るクソ男!
「そうね、初めてだから痛いのもあったけど、それ以上に恋人になれたっていう悦びもあったわね、でもあっけなく浮気されて別れたけど」

「あっ」
花は気まずそうに窓の外を見始めた。

「こういうのは、私がどうの言うことじゃないけど、一つだけ約束して」

「何?」

「自分を守って」

窓の外を見ていた花が振り返る、月明かりが逆光になって縁取りしたように見える。

「避妊」

花が手の先まで赤くなっていくのがわかる。
かわいい。
ってそんなことを考えてる場合ではなく、母親がするべき教育を私がしないといけない。

「何も言わなくてもきちんとしてくれる人もいけるけど、中には言わないとしてくれないひとや言ってもしてくれない人がいる。ゴムをつけるつけないが愛の大きさじゃない。人によっては好きだから付けたくないとか言うやつがいるかもしれないけど、その先の覚悟があるのかも見極めないと」

「覚悟・・・」

「もし、妊娠したら花は今の仕事を休職もしくは辞めなくちゃいけなくなるし、身体的にも精神的にも負担を受けるのは花になる。相手が花を本当に大切に考えているなら、きちんとするべきなの」

てか、新二は前科者だし。
森川彩香を手に入れるためにわざと妊娠させようとしたし。思い出すと腹が立つな!

「もし行為の最中だって、相手がきちんと付けてくれないなら急所を蹴ってでも終了しちゃって。そもそも、ゴムを付けてって言っても付けない男なんて、のちのち苦労することにもなるからね」

話を聞きながら、さっきまで赤かった顔が青くなっていく。
でも、きちんと言っておかないと。
何かあって泣くのは花なんだ。

「わかった?絶対に避妊をしてね!してくれない男ならすっぱり切り捨てて!!」

「うん、わかった。お義兄さんはどうだった?」

「賢一?そりゃ、野獣のようだけど基本は紳士だから」

花が吹き出したタイミングで私も笑う。
二人の笑い声がさらなる笑いをよんで、沢山のクッションの中で転げながら笑った。

「賢一もようやく落ち着いてきたら、そろそろ考えているのよ」

「そうなんだ、わたしも二人みたいになりたい」


「私は花に最高の恋をして幸せな人生を送ってほしい」

「うん」


月明かりに照らされながらいつの間にか眠りに落ちた。

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