タングルド
「ねぇ、また泊まりに来てもいい?」
「もちろん、別に賢一がいる時だって構わないんだからね」
「うん、ありがとう」
「さぁ行こう」
二人で朝食を食べた後、出勤の為に一緒に部屋を出た。
乗り換えでそれぞれの路線に分かれたあと人通りのない通路を見つけて、一度も通話をしたことはないが登録していた連絡先をタップした。
トルルルル
『はいっ』
「新二くん、今大丈夫?」
『はい、あっ、おはようございます』
『あの・・・挨拶が遅くなってすみません。は・・・はな・・さんと』
なんだか、すごくテンパってる。
私のことをおちょくってくれていた時とは随分違うわね。
「聞いたわ、それで新二くんに確認しておきたいことがあるんだけどいいかしら?」
『はい、どうぞ』
「花とはどういうつもりで付き合うことにしたの?気分を悪くするかもしれないけど、私は100%新二くんを信用できないの」
ぐっ
新二の喉の鳴る音が聞こえる
『おれは花さんが好きです』
「森川彩香さんは新二くんと同じ職場にいるのよね?しかも、彼女をISLND住販に誘ったのは新二くんだと聞きました。彼女に情を残したまま花を好きだと言われても信じられない」
『あっ』
一瞬言葉を詰まらせてから
『森川さんとはあの日に関係を終わらせてます。ただ、全てを無くした彼女が可哀想でISLAND住販で働くことを提案しました』
『会社では一緒にいることはありますが、二人きりになったりすることは無いです、勿論休みの日に会ったりもしてません』
「同情ってこと?」
『はい、もうおれは彼女に愛情を一ミリも感じてません』
「新二くんが同情の“情”だとしても、はたして彼女も同じ感覚なのかしら?彼女はまだ新二くんの愛情を信じているかもしれない。新二くんが優しさのためにしていることは、果たして花はどう受け止めるかしら?」
『あっ』
弱々しい声が聞こえてくる。
「森川彩香さんのことは私はなにも花には言って無いの、私が言える事では無いから。ただ、噂なんて案外本人の耳に入ったりするし、森川彩香さんが私の時のように、何も知らない花に悪意を持って話すことだってあり得るでしょ。10年以上も付き合っていた元カノが新二くんの口利きで一緒に仕事をしているなんて、そんな話を他人から聞かされたらどんな気持ちになるかしら」
新二は何も言えずただ聞いているようだ。
「新二くんと森川彩香さんが同僚としてすごしているとしても、1日の半分は一緒にいて、下手をすると花よりもたくさんの時間を共有するわけよね?そこでまた、情が湧かないという確約は無い。人の心は誰かが引き止めることもできないし、もし、また森川彩香さんに情を掛けることがあったら、その時はあなたの誠意としてあなたの口から花に別れを告げて頂戴。
中途半端な憐れみや優しさは、何よりも残酷だから」
『本当に、森川さんのことは』
「色々ときついことを言ってごめんなさい。新二くんは義弟だけど、花は血を分けた姉妹なの。私にとって大切な妹なの、その妹が私の時のように、自分の預かりしらぬところで傷つけられるのは嫌なの。この意味、新二くんならよくわかってるでしょ」
そう、あの時、森川彩香を暴走させたのは紛れもなく新二くんだから。
しばらくの沈黙の後
『すみませんでした。あの時のこと義姉さんに謝罪をしてませんでした。おれは、自分が一番の被害者で不幸になったから義姉さんに謝る必要はないと思ってました。でも、社会に出て少しずつ、おれが間違っていたことに気がついたけど、今更、義姉さんに謝罪ができないでいました。森川さんのことも、おれを踏み躙った人を助けることで優越感に浸りたかったのかもしれないです。でも、それが今になって花を苦しめるかも知れないと義姉さんに言われるまで気が付かなった。
本当にすみませんでした。絶対に花には悲しい思いをさせません。おれが守ります』
「私が言いたかったことは全て言わせてもらったから、あとは二人で考えて」
通話を切ると、朝からどっと疲れが出た。
誰かを注意したり、叱ったりするとその分、全て自分に返ってくる。
スッキリするどころか重い気持ちになる。
それでも、新二くんが森川彩香に操られて私たち姉妹を陥れようと言う感じにはとれなかった。あとは新二くんがどう男気を見せるかだけど不安がないわけではない。
「はぁ、賢一には話した方がいいよね」
このままだと、義姉の義弟いじめみたいだ。
仕事に行こう。
雪はISLANDビル向けて歩き出した。
「もちろん、別に賢一がいる時だって構わないんだからね」
「うん、ありがとう」
「さぁ行こう」
二人で朝食を食べた後、出勤の為に一緒に部屋を出た。
乗り換えでそれぞれの路線に分かれたあと人通りのない通路を見つけて、一度も通話をしたことはないが登録していた連絡先をタップした。
トルルルル
『はいっ』
「新二くん、今大丈夫?」
『はい、あっ、おはようございます』
『あの・・・挨拶が遅くなってすみません。は・・・はな・・さんと』
なんだか、すごくテンパってる。
私のことをおちょくってくれていた時とは随分違うわね。
「聞いたわ、それで新二くんに確認しておきたいことがあるんだけどいいかしら?」
『はい、どうぞ』
「花とはどういうつもりで付き合うことにしたの?気分を悪くするかもしれないけど、私は100%新二くんを信用できないの」
ぐっ
新二の喉の鳴る音が聞こえる
『おれは花さんが好きです』
「森川彩香さんは新二くんと同じ職場にいるのよね?しかも、彼女をISLND住販に誘ったのは新二くんだと聞きました。彼女に情を残したまま花を好きだと言われても信じられない」
『あっ』
一瞬言葉を詰まらせてから
『森川さんとはあの日に関係を終わらせてます。ただ、全てを無くした彼女が可哀想でISLAND住販で働くことを提案しました』
『会社では一緒にいることはありますが、二人きりになったりすることは無いです、勿論休みの日に会ったりもしてません』
「同情ってこと?」
『はい、もうおれは彼女に愛情を一ミリも感じてません』
「新二くんが同情の“情”だとしても、はたして彼女も同じ感覚なのかしら?彼女はまだ新二くんの愛情を信じているかもしれない。新二くんが優しさのためにしていることは、果たして花はどう受け止めるかしら?」
『あっ』
弱々しい声が聞こえてくる。
「森川彩香さんのことは私はなにも花には言って無いの、私が言える事では無いから。ただ、噂なんて案外本人の耳に入ったりするし、森川彩香さんが私の時のように、何も知らない花に悪意を持って話すことだってあり得るでしょ。10年以上も付き合っていた元カノが新二くんの口利きで一緒に仕事をしているなんて、そんな話を他人から聞かされたらどんな気持ちになるかしら」
新二は何も言えずただ聞いているようだ。
「新二くんと森川彩香さんが同僚としてすごしているとしても、1日の半分は一緒にいて、下手をすると花よりもたくさんの時間を共有するわけよね?そこでまた、情が湧かないという確約は無い。人の心は誰かが引き止めることもできないし、もし、また森川彩香さんに情を掛けることがあったら、その時はあなたの誠意としてあなたの口から花に別れを告げて頂戴。
中途半端な憐れみや優しさは、何よりも残酷だから」
『本当に、森川さんのことは』
「色々ときついことを言ってごめんなさい。新二くんは義弟だけど、花は血を分けた姉妹なの。私にとって大切な妹なの、その妹が私の時のように、自分の預かりしらぬところで傷つけられるのは嫌なの。この意味、新二くんならよくわかってるでしょ」
そう、あの時、森川彩香を暴走させたのは紛れもなく新二くんだから。
しばらくの沈黙の後
『すみませんでした。あの時のこと義姉さんに謝罪をしてませんでした。おれは、自分が一番の被害者で不幸になったから義姉さんに謝る必要はないと思ってました。でも、社会に出て少しずつ、おれが間違っていたことに気がついたけど、今更、義姉さんに謝罪ができないでいました。森川さんのことも、おれを踏み躙った人を助けることで優越感に浸りたかったのかもしれないです。でも、それが今になって花を苦しめるかも知れないと義姉さんに言われるまで気が付かなった。
本当にすみませんでした。絶対に花には悲しい思いをさせません。おれが守ります』
「私が言いたかったことは全て言わせてもらったから、あとは二人で考えて」
通話を切ると、朝からどっと疲れが出た。
誰かを注意したり、叱ったりするとその分、全て自分に返ってくる。
スッキリするどころか重い気持ちになる。
それでも、新二くんが森川彩香に操られて私たち姉妹を陥れようと言う感じにはとれなかった。あとは新二くんがどう男気を見せるかだけど不安がないわけではない。
「はぁ、賢一には話した方がいいよね」
このままだと、義姉の義弟いじめみたいだ。
仕事に行こう。
雪はISLANDビル向けて歩き出した。