タングルド
夜に一人で帰すわけにはいかないので、急いで花ちゃんを追いかけ、家に連れ帰り雪と二人にしてから新二に電話をかけた。

『兄さんどうかした?』

「どうかしたじゃない、雪に注意をされなかったのか」

『え?』

「花ちゃんと話をしたのか?」

『いや、最近花が電話に出なくて・・・LINEもスルーされているんだ。どうしたらいいのかわからなくて』

「花ちゃんの家に行ったのか?」

『いや、連絡してからじゃないと迷惑かと思って』

はぁ
盛大なため息が出た。

『電話してきてため息とか何?』

「雪が森川さんのことでお前に何か言わなかったか」

『え!』

「電話に出ないからそれでもういいと思う程度なら、花ちゃんにちゃんと別れの言葉を掛けろ!中途半端なことはするな」

『何を言ってるんだよ、あまりしつこくして嫌がられたら、おれだって距離感の掴み方がわからないんだ』

「森川さんとはどうなってる?」

『どうもなってない。時々、食事に誘われるけど断っているし』

はぁ
「お前が一番大切なのは誰なんだ?」

『花に決まってる』

「それなら、どうして森川さんに毅然とした態度を取らないんだ。いつまで、曖昧にしておくつもりだ。そんなことだから大切な人を傷つけることになるんだ」

『え?花になにか』

「森川さんが花ちゃんにお前とのことを話した見たいだ。ついでに、婚約者だった俺が浮気をして雪は略奪をしたと言ったそうだ」

『なっ、森川さんに話してみる』

「何度も聞くが、お前にとって大切なのはどっちだ?森川さんと会って二人で話して、花ちゃんを後回しにするつもりじゃないだろうな?順番を間違えたらもう二度と花ちゃんはお前のところに戻ってこない」

『あっ、おれ、どうしよう、今から花の家に行ってみる』

「花ちゃんなら今俺の家で雪が一緒についてる」
「しっかり現実を見て、大切なものを守るなら切り捨てないといけないものがある。もし、キッパリと切り捨てられないなら、森川さん以外の人を愛してはいけない」
「よくよく考えろ、もし切り捨てられないならここには来るな。きちんと花ちゃんと向き合うのなら今からすぐにきなさい」


「はっきりと言う、迷っているなら来るな」

そう言うと通話を終了した。


かつて愛した人を傷つけたくないのはわかる、でもその優しさが今、大切な人を傷つける刃になることにきちんと気づいて欲しい。
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