タングルド
茂に差し入れをしたいが、この時間では開いている店も無く、コンビニに入る。
昨今のコンビニスイーツは専門店にも引けをとらない。
いちごとたっぷりの生クリームをクレープ生地で包んでさらにチョコまで掛っている。この時間に私が食べるのは罪悪感ありまくりだが、仕事中の脳を休めるには良い気がした。
ウーロン茶とエナジードリンクも一緒に購入して営業部の入っているフロア-に向った。

さすがに、残っている人がいないのか誰もいない部屋は電気が落とされていたが、廊下のつきあたりの茂がいるスペースは半分ほど電気が付いている状況で、少しほの暗さを感じる。
夜のオフィスってちょっと気持ち悪いのよね・・・などと考えながら歩いていると給湯室の付近から男女の声が聞えてきた。

「なんでもするからモエに乗り換えて」

ここの給湯室の空気孔が廊下に付いているため、給湯室の会話が聞えてきたりする。
これっていわゆるオフィスラブってやつ!給湯室で!!
どうしよう・・・通過したいけど気付かれちゃうよね・・・

「だったら、ここでする?なんでもするんだろ」

ん?すっごく聞き覚えのある声が聞えてきた。

「いいよ、北山さんとのエッチが忘れられなくて、セカンドでもいい」

き・た・や・ま?

名前を聞いた時に勢いよく給湯室のドアを開けると、知らない女と茂がこちらを見ていた。

「雪?えっと・・・」

さっきの話だとこの二人はすでに“済”だろう。手に持っていた差し入れを入り口近くのゴミ箱に捨てる。

「ここって、空気孔が廊下に面しているから話は筒抜けだよ」

「「えっ」」
気付いていなかったのか、それとも女の方はわかっていたのか気まずそうな茂をよそに少し勝ち誇った様な表情が覗いている。

「乗り換えはご自由にどうぞ、私は下車しますので。じゃあ、そういうことでバイバイ茂」

何かを言っているようだったが、まっすぐに前を向いてエレベーターに乗った。

ロビーで一度立ち止まった。もしかしたら、ドラマのように茂が追いかけてきてくれるんじゃ無いかと期待をした。


でも現実は


追いかけてきてはくれなかった。

一人で外に出た。


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