タングルド
しっかりと化粧直しをして仕事中だと電話を取るとりきに支障が出てしまう為付けていない長いチェーンのピアスに付け替える。

鏡の前でゆっくりと横を向くと耳元でシャランと小さな金属音を立てて光が揺れる。


「よし」

と声に出してレストルームから出た。


ウキウキした気持ちを抑えながらエレベーターに乗り込むと背後から「ちょっと待って」と声が掛かった。

その声の主に覚えがあるので閉めるボタンを連打したいところだが、その人の噂流布能力の高さを考えると危険を冒さず諦めて開くボタンを押して彼女が乗るのを待った。

「豊田さん北山くんと別れたのにデート?それとも合コンで男を漁りにいくの?」

相変わらず、私を目の敵にしている。

「お疲れ様です佐藤さん」
挨拶だけして扉を凝視しする。
最近、エレベーターが鬼門になっている気がする。
大変だけど、帰りは階段にしようかしら、健康にもいいし。

「相変わらずお高くとまってるわね」


いやいやいやいやいや
お高くとまっているのはあなたの方でしょと、言いたいが下手に刺激するとお仲間女子と共に有る事無い事噂を流して厄介なことになる。

「そんなことはありません、その様に映っているのでしたら申し訳ありません」

「そ言ういう・・・」
チーーーーーーン!

ナイス!エレベーター、いいところで1階に到着して扉が開いた。

「失礼」とだけ応えて一目散に外に出た。
< 46 / 226 >

この作品をシェア

pagetop