タングルド
「今夜、いける?」

「あ~、ちょっと無理かも」

「明日は?」

「う~ん」

雪を誘っても乗ってこなくなった。

「オレなにか気に障ることでもした?」

他の人達と違って雪の前では自分や場を作ったりしなくて済むから一緒に食事や酒を飲むのは楽しい。
あまりにも気を遣わなすぎて嫌になったんだろうか?

「そうじゃなくて、この間の合コンで彼女が出来たって言ってたでしょ。ダメだよ彼女がいるのに異性と差し飲みなんて」

「あの時のことを気にしてるんだ」

「気にするというか、結局私のせいで別れてしまったんでしょ」

「別に雪のせいじゃないよ」

「でもダメ、私と飲みに行く時間があるなら彼女に使って。そういうことだから」

彼女と出かけたいわけじゃない。
付き合って欲しいと言われて断るのが面倒くさかった。
それだけなのに。
別に彼女を抱きたいわけじゃない。
雪なら体の関係がなくても一緒にいたい。

好きでもない人の為に雪に会えなくなるって・・・

そういうことか


オレは

雪が好きなんだ。

5年もかかって気がついた、いや、そうじゃない。
恋人というくくりではいつか別れが来ることが怖かった。だから、無理矢理“友人”という枠に嵌めていたんだ。
でも、もうダメだ。


彼女に別れを告げた。



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