タングルド
「北山さん彼女のことが好きなんですか?」

何をいきなり、どちらにしても相手にするつもりはない。
「忘れ物?」

「北山さんともう一度きちんと話をしたくて来てしまいました」

「話?」

「私、やっぱり北山さんが好きです。彼女がいるのはわかってます。秘書課の豊田さんですよね、綺麗だし仕事も出来るし。私は普通だし、仕事もあまりできないし」

「わかってるじゃないか」

まさかオレがそういう言葉を吐くと思わなかったのか一瞬体がピクリと動いた。

「で、でもその・・・私の方が」

「若いとか言うなよ、くだらない」

彼女は明らかに動揺している。普段のオレは常に空気を読んで雰囲気を壊すことをしないから。

「そもそも、酔った勢いの一回だけで諦めるんじゃないの」

「私、諦めようと思ったんです。でも、入社してからずっと仕事が出来るのに優しい北山さんにあこがれてて」
「あまり会ってもらえなくてもいい、月に一回でもいい、なんでもするから萌に乗り換えて」

頭悪そう、本当に面倒くさい。

「だったら、ここでする?なんでもするんだろ」

「いいよ、北山さんとのエッチが忘れられなくて、セカンドでもいい」

なに言ってんのコイツ、こんなこと言う女を彼女にしないだろ。
バカバカしくなってため息をついたところで給湯室のドアが開いた。

「雪?えっと・・・」
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