タングルド
幸福感の中で目が覚める。
愛おしい人はまだ眠っているようだ、さてどんな表情を見せてくれるだろう。

しばらくすると目覚めた雪の戸惑いがふれあう肌から伝わってくる。
無言でベッドを出ようとする所をみると、黙って帰ってしまいそうだ。
悪いがそうはさせない。

「もしかして、一人で帰ろうとしたわけじゃないですよね?」

「あの・・・うん・・・帰らないと」

あきらかにバツが悪そうな表情に少し意地悪な気持ちが湧く。
「ここから出勤でいいでしょ、それにあと一つ残ってるから」
そう言って未使用のスキンをつまんで見せる。

ベッドから出ようとしていた雪を抱き寄せると、昨夜さんざん愛した雪のいいところを攻めると甘くとろけてくる。
腕の中で二ヶ月間のおためしについて確認すると、観念した表情がさらにそそる。

シャワーから出ると雪が口紅を引いているところで、その姿にまた欲情する。
押さえが効かない、まるで性に目覚めたばかりの中坊みたいだが、そんな自分が嫌いでは無い。
本当はこのまま本能のまま雪と過ごしたいと思うが、今の俺は中坊ではなくて社会人だ。あきらめて、会社にいこう。

「今夜は雪の部屋に行くね」

「え?」

「だって、元カレが来るかも知れないでしょ。ようやく手に入れた好きな人を取られたくないから。俺も結構あせっているんだよね」
どんな小さな不安要素も無くしておきたい。


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