目指した道と…
ある世界の、ある少年が歩んだ道の記録である。

彼は頭も要領も良いため、周囲にも優秀と謳われていた。
魔物を育て召喚する『召喚士』、周りの多くの者たちが夢見たように、彼もまた、その道を目指すべく、修行の旅へと向かった。
周りの者たちももちろん、彼は優秀な『召喚士』として名を馳せるであろう事は疑う余地も無かった。

旅の途中、彼は少し変わった姿をした一人の女と出会った。
異世界から来たというその旅の女は、彼の事情を聞くと不思議なものを手渡し、こう言った。

「仲魔を増やすなら、戦って力を誇示するより、自分が簡単に捕まえることが出来ると、魔物に知らしめたほうがきっと従えやすいわ!」

彼女はその道具の使い方を教えた。

「…簡単でしょう?これは私の世界に伝わるものよ!詳しいことは言えないけれどね!…私は、自分の世界に戻る方法を探す旅を続けるわ!しばらくはこの世界でもなんとか生きていけそうだし…。あなたは立派な『召喚士』になってね!」

彼女は去っていった。
彼は彼女の道具に興味を持ち、その道具を魔物に向かって使ってみた。
あっさりと、今までの苦労が嘘のように、驚くほどあっさりと魔物は自分の配下へと成り下がった。

彼は、あっという間に次々と、自分に有利となる魔物を従えていった。


そして時が経った。
世の中には魔物を悪用して商売を始める輩が増え、そうして出来た組織の一つが幅を利かせ始めた頃、彼はいた。
目立たぬ黒の制服に身を包み、ボスと呼ばれた男のすぐ隣に。
彼は道具を使い、次々と罪もない魔物たちをもその手に収め、ついにその組織の幹部にまで成り上がったのだった。優秀な『召喚士』になれたはずの、あの頃の彼の姿はもう無かった。

その後、彼がどうなったのかは記録されていない。
その組織は人知れず存在しているらしいが、輝かしい未来を持っていたはずの彼もまた、その組織にとってのただの歯車の一つになってしまったからだ……
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