Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!



『でも、日詠先生も、こんな夜遅くに、専門外であるハンドセラピィを学んでいらっしゃるぐらいレイナさんのことを大切に想っているじゃないですか・・それを伝えればレイナさんもきっとわかってくれるんじゃ・・・』

「・・・大人になると、想っていることを伝えたい相手にうまく伝えられずにもがくようになるんですかね・・・まあ、僕が多忙を理由に伶菜に誤解されるような行動をしていたから悪いんですけど・・・だから、今、僕はハンドセラピィにすがって悪あがきしている・・・」

『日詠先生・・・・』


苦笑いしながら、ゆっくりと自分の想いを丁寧に言葉に置き換えている日詠先生。

彼のような、地位も名誉もありそうなお医者さんでしかもイケメン
完璧な男性という言葉以外に彼にピタッと当てはまりそうな言葉が見当たらない

そんな日詠先生も自分の想いが大切な相手に伝えられなくて
しかもその相手のことが他人には理解されていて
自分ではどうすることができなくて
突破口を探そうとして自分のできることに取り組んでみるけど
悪あがきをしてしまっている

こんな完璧な男性だって悪あがきしてしまうぐらい
恋愛って難しいんだ


「だから、神林さんは心に蓋をしないで自分の想いに正直になること、それを大切にして下さいね。あと・・・」

『・・・・・あと・・何か・・・?』

「大人の男は、僕みたいに恋愛不器用な人間がいることも理解しておくと良いかと。」


大人の男は恋愛不器用な人間がいる・・・か・・・

あたしみたいに恋愛経験ナシな人間には
そういうハードルが高い人種がいるということを知っておこうということかな?

あたしにとっても難しい話だな・・
でも、日詠先生が身の上話を晒してでも、あたしにそれをレクチャーして下さったこと・・・それもこの実習での貴重な経験


『・・・わかりました!そうなるよう努力していきます!!!』

「でも、神林さんは、まずは睡眠ですね。もう少し心電図で経過を見たいので、ここであと1時間ぐらい眠って休んでから帰って下さいね。岡崎先生と松浦先生には僕から伝えておきますから。お大事に。」

『はい。ありがとうございました。』

「こちらこそ、神林先生、ハンドセラピィの練習に付き合って頂いてありがとうございました。」

『どういたしまして・・・』

「それじゃ、僕はこれで。」



私の、身近で心強いお医者さんになって下さった日詠先生
彼は近所の優しくて親切で謙虚で頼りになるお兄さん医師の顔をして笑ってみせた。

その顔にも癒されたあたし。
そのせいもあってか、慢性寝不足だった体が要求していたらしい深い眠りに陥った。


実習16日目


頑張って作成したレポートを褒められて嬉しい日だったはずなのに
自分で制御できない胸の疼きの原因が、そして、大人の男の恋愛の難しさというものが理解できなくて苦しい

そんな日

明後日はとうとう実習最終日で症例発表の日
そして明日はレポートとレジュメをしっかりと見直し、症例発表の練習をしなくてはならない日

だから今日は早く帰ってその準備をしなきゃいけない日でもあるのに
あたし、今、どこにいるの・・・?



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