Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!



「とうとう今日で終わりね。戸塚さん、質疑応答対策はちゃんとしてきた?」

「バッチリです!もりもり考えてきましたよ♪」

「いいわ。その調子よ!」

「呼吸器作業療法と言えば、戸塚ですって言わせてみせますよ!任せてくださ~い!」


実習最終日の朝礼前。
実習開始当初はあんなにも険悪な雰囲気だった絵里奈と長野先生だったのに、今は姉妹のように楽しく会話している。


「今日は確か症例発表午前11時からだよね?」

『はい。今日は長谷川さん症例で発表します。前島さん症例とどっちにするかすごく迷ったのですが、より苦労したほうで試してみたい自分がいて。』

「そうか。症例発表は貴重な経験だし、いいと思う。」

『はい、とても。でも、前島さんの件では本当に貴重な経験をさせて頂きありがとうございました。』

「こちらこそ。発表、頑張って!」



あたしも元祖あたしの憧れで身近な作業療法士である下柳先生と和やかに話すことができて。

絵里奈とあたしはケースバイザーを担って頂いた彼女らに頑張ってと背中を押され、症例発表に臨んだ。


今回の症例発表は作業療法室部門内で行われる
あたしが実習させて頂いている名古屋南桜総合病院リハビリテーション部作業療法室部門のスタッフは全部で21人

作業療法部門は脳血管障害チーム、神経難病チーム、呼吸器疾患・循環器疾患・がん疾患を取り扱う内部障害チーム、そしてハンドセラピィチームの4つから成り立っている

そのチームが専門性の垣根を越えて集合しているのが、今回の症例発表
実習学生の成長ぶりをみんなで見守って下さる大切な機会なのだ



「それでは症例発表を始めたいと思います。質疑応答は発表後にお願いします。ではまずは、戸塚絵里奈さんから。」

司会進行役の松浦先生から名前を呼ばれた絵里奈。

はい!と大きな返事をしてから、演者台のほうへ歩く。
普段は元気いっぱいニコニコ顔の絵里奈なのに、今はノー笑顔どころか顔が引きつっていて、見ているこっちまで緊張してしまう。

「よ、よろ、しくお願い・・します。今回は呼吸器疾患症例を挙げさせて頂きました。それでは・・・お、お手元・・にあるレジュメの1枚目をご覧下さい!」

声も酷く震えていて、彼女の次はあたしもこうなるんだと肩を竦めた。
それでも、絵里奈は発表開始1分ぐらいから、声の震えが止まり始め、彼女らしい聞き取りやすい声に変わった。

そこからは絵里奈の発表は聞き手がその内容を集中して聴くことができる安定感があり、彼女は無事に発表を終えた。
その後の質疑応答でも、長野先生とかなり対策を練っていたようで、集まって下さった先生方からの質問に、的確に答える絵里奈の姿がそこにはあった。

良かったよ、絵里奈!
次はあたしの番だ・・・



< 105 / 226 >

この作品をシェア

pagetop