Re:habilitation study ~鬼指導教官にやられっぱなし?!



「では次は、神林真緒さんの発表です。こちらも質疑応答は発表後にお願いしたいのですが・・・手加減なしで遠慮なく質問してあげて下さい。宜しくお願い致します。」

司会進行が岡崎先生に変わった。
会場の先生方に深々と頭を下げる彼。

さっきまでは松浦先生の和やかな司会もあってか会場内もやや賑やかな空気だった。
でも、今はその真逆。

岡崎先生が深く頭を下げているその姿で、あたしだけではなく、会場の空気がきりっと締まった。
それは多分、岡崎先生が持つ、彼が真剣になった時の、気軽に誰も近寄れないような空気を会場内にいる人間が感じたせいだ。
いつもの、気怠そうで面倒臭そうな彼とは真逆のその空気を。


そんな空気になったこともあってか勝手に足が震える。
唇も。
マイクの高さを変える手も思い通りに動かないから
どうしていいのかわからず目が泳ぐ。

そんな中感じた、真正面からの視線。
それはあたしをじっと見てゆっくりと頷く岡崎先生のもの。

“大丈夫だ”

そんな声が聞こえてくるようなその視線に
あたしはようやく目の焦点が定まった。


『宜しくお願いします。今回は整形外科の患者さんです・・・・症例は22才男性。診断名は左腕神経叢損傷。現病歴ですが・・・・』

唇の震えも止まったあたしは、発表原稿を丁寧に読むことに専念でき、最後まできちんと発表することができた。


「それでは、質疑応答に移ります。質問者は挙手をしてからお願いします。」


岡崎先生の、いつになく真剣さが感じられる声色で紡がれたその一言で、再び会場内の空気に緊張感が高まる。

そんな会場を凝視する岡崎先生。
まるで、無言で“遠慮するな”“質問でどんどん攻めろ”と促しているようにも見える。
それに応じるかのように数人の先生の手が挙がった。



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